もくじ

厄祭戦考察1「どのように起こった?」
厄祭戦考察2「なぜ起こった?」
厄祭戦考察3「人類間戦争の対立構造」
厄祭戦考察4「なぜMAは暴走したのか」
厄祭戦考察5「地球と火星どちらが暴走MAをつくったのか?」
厄祭戦考察6「MS開発史(いくつかの定義づけ)」
厄祭戦考察7「MS開発史(人類の猶予期間)」
厄祭戦考察8「MS開発史(厄祭戦初期のMS)」
厄祭戦考察9「MS開発史(厄祭戦中期の期間)」
厄祭戦考察10「MS開発史(厄祭戦中期のMS)」
厄祭戦考察12「MS開発史(厄祭戦末期・初頭)」
厄祭戦考察13「MS開発史(厄祭戦末期・中葉)」
厄祭戦考察14「MS開発史(厄祭戦末期・末葉)」
厄祭戦考察15「MS開発史(厄祭戦末期の期間)」
厄祭戦考察16「MS開発史(厄祭戦終期・前)」
厄祭戦考察17「MS開発史(厄祭戦終期・後)」
厄祭戦考察18「tips」
厄祭戦考察19「阿頼耶識システム(意識システム?)」
厄祭戦考察20「阿頼耶識システム(人工脳の搭載)」
厄祭戦考察21「阿頼耶識システム(脳への負荷の正体)」
厄祭戦考察22「阿頼耶識システム(疑似阿頼耶識)」
厄祭戦考察23「阿頼耶識システム(バエルの阿頼耶識・前編)」
厄祭戦考察24「阿頼耶識システム(バエルの阿頼耶識・後編)」









厄祭戦考察1「どのように起こった?」
2018/11/9(金) 午前 0:54

いまさらだけど、なんかgyaoで一挙放送してたので、改めて。
鉄血のオルフェンズにおいて殆ど語られていない厄祭戦について、
アニメとwiki程度の知識でしかありませんが、考察してみたいと思います。

まず厄祭戦についは本編では本当になんの説明もなく、ざっくり分かっていることで
MAが大暴れ→人類滅亡の危機→MSをつくってMAをやっつけた→やっつけた人たちがG.H
このくらい。
戦争の期間、なぜ起こった、いかに推移した、などなど、まったくわかっていません。

まず発端、つまり「なぜ、どのように起こったのか?」について推理してみます。
なぜ?は少しおいておいて、どのように起こったのかの手がかりは公式HPの兵器紹介
ハシュマルの説明に、

(要約)
戦争の自動化が進みMAが開発されたが、殺戮兵器へと進化、人類の手に余るものとなった

とある。つまり、
厄祭戦以前は、すでに戦争状態があり、ハシュマルのようなMA(天使級と仮称)より以前の
MA(前天使級MAと仮称)による自動化兵器の運用・開発が行われ、同兵器を用いた戦闘が
国家間ないし組織間で行われていた。

少なくともどちらか一方の組織がある日突然、MAを開発、実践投入したというわけではない。
これはハシュマルの格闘戦能力からも言えることで、旧世代兵器(戦車や戦闘機など)を
相手に格闘戦能力は不要であり、対前天使級MAのための戦術ないし武装といえる。

また天使級MAに搭載されたAIは前天使級では対抗できない圧倒的なものであっただろう。
なぜなら、普通に考えて無人機に対抗するなら無人機を当てるからだ。
AI暴走による忌避などを理由に、人口の1/4を減らしてまで有人機を使うなどありえない。
天使級の格闘戦能力を上回るAIを開発できなかったためMSと阿頼耶識が用いられた
と考えるほうが自然である。

すなわち厄祭戦は、ある組織間における戦争中または戦争状態に、超格闘戦能力AI搭載
天使級MAが登場したところから始まったとすべきだろう。

次回は「なぜ起こった?」を考察してみます。

鉄血考察




厄祭戦考察2「なぜ起こった?」
2018/11/10(土) 午後 10:42

前回「どのように起こった」にて
厄祭戦のスタートを定義したところで、
そもそも厄祭前の人類間戦争はなぜ起こったのか?
そして厄祭戦はなぜ起こった、つまりなぜMAは暴走したのか?
この二つのなぜ、まずは人類間の戦争の理由を考察します。

注目したいのは1話、火星に向かう途中のガエリオの台詞
(エイハブリアクター運用とその通信障害問題を踏まえ)
「そのおかげで地球からの目が届きにくくなり、我々のような監査官の仕事が増える
300年前の大戦だってこれが原因みたいなものだろう?」

この台詞からは二つの解釈ができます。
1 目の届きにくい地球圏外で厄祭戦の原因になる反乱などが起こった。
2 エイハブリアクター運用が厄祭戦の原因になった。

1について、思いつきそうなストーリーとしては、本編のような地球からの弾圧に
苦しんだ火星などの下級市民がMAをひそかに開発した。というありそうな話ですが、
これについては否定できます。
なぜならば本編における貧困は機械の自動化、つまりAIが使われていないから
起こっているものであり、CGSの少年兵やドルトコロニーの労働者、もろこし畑など
高度なAIをもつ機械があれば全て解決します。

公式HP、兵器紹介ハシュマル説明文より
「モビルアーマー」と人類の大戦が勃発する以前、機械の自動化は
人々の豊かさの象徴の一つであり、(抜粋)

と、あるように
厄祭戦以前はエイハブリアクターによりエネルギー問題はなく、機械化により
労働の必要もなく、貧富の差はあれど貧困層の生活はかなり楽だといえるでしょう。
また、機械の自動化が豊かさの象徴であるなら、コロニーなど宇宙での生活のほうが
より自動化が求められるので、もしかしたら宇宙に住む人の方が格式が高かった
のかもしれません。

これらの理由から人々の反乱はありえない、それどころか戦争の原因になる要素の
殆どがすでに解決済みで、残るは宗教と資源くらいなものです。

宗教に関しても、人が裕福になれば救済を求める必要がなくなるので力を失っている
と考えられ、現に本編で宗教要素は葬式くらいしかありませんでした。

よって戦争原因は資源くらいしかありません。
そこで2のエイハブリアクター運用が原因説がでてきます。
つまり、
  リアクター運用に欠かせない有限且つ希少資源のハーフメタルの争奪戦
これが厄祭戦前に起こった人類間戦争の原因ではないでしょうか。

次回は「人類間戦争の対立構造」を考察してみます。

鉄血考察




厄祭戦考察3「人類間戦争の対立構造」
2018/11/11(日) 午後 7:26

前回「なぜ起こった?」にて
厄祭戦前の人類間戦争の原因については火星ハーフメタルであると結論づけました。
今回はこのハーフメタル争奪戦はどのような対立構造であったか考察してみます。

単純に考えられる可能性として
1 (未開拓の火星をめぐって)地球の国家間で争奪戦が起こった
2 (既に火星は開拓され)火星資源を独占する火星側と対する地球と戦争が起こった
この2通りです。

例えば石油などに置き換えると
1なら、中東で石油が出ることが判明したので、周りの国が中東の土地の取り合いをした。
2なら、中東の国が石油を独占しているので、周りの国が協力して中東に戦争をしかけた。
といったところです。
よって、中東からの石油の輸入権を争って、周りの国同士が石油を使って戦争をするという
3のパターンになりそうなものは、明らかに合理性を欠いているので除外しています。

ということで当時の火星の開拓状況が分かれば1か2か結論が出そうです。
まず出典不明ですが、ピクシブ百科事典のハシュマル(MA)の項において、クリュセが
300年前も人口密集地であった旨の記述があります。
また、そもそもMAの行動原理からして人口密集地に向かうので、ハシュマルが火星にいた
以上、300年前火星のどこかに人口密集地があった可能性は高いです。

火星に人口が集まっているということは、少なくとも火星はテラフォーミング済みであり、
資源採掘だけならば地球から無人機を送りこめばいいのでそこまでする必要がありません。
ということはコストをかけて火星をテラフォーミングするだけの価値があったからであり、
それは資源採掘による恩恵を受けた人たちが、資源そのものを独占し、地球に運ぶでもなく
火星でその資源を使い放題で裕福な暮らしをしたかったからではないでしょうか。

つまり2のパターンです。
おそらく当時、火星にはハーフメタル成金みたいな人たちがいてハーフメタルの独占をし、
火星に都市を築くまでに至っていたのではないでしょうか。
これを良しとしない地球の国々は、さながら大和帯にくる北朝鮮の密漁船のように、
火星に無人掘削機を送り込み密漁ならぬ密掘をしはじめたのではないでしょうか。
(ハーフメタル成金側も勝手に火星に居座っているだけかもしれないので目くそ鼻くそですが)

当然、ハーフメタル成金側も、自分達が開拓で使った無人掘削機を改造して迎撃したでしょう。
ところで無人掘削機の理想的な性能ですが、
・地球から火星までの惑星間航行が可能
・リアクター搭載
・高度なAI搭載
・自己修理が可能
・本体とは別に子分みたいなのがたくさんいて、広範囲の資源探索や掘削が可能
・資源さえあれば現地でその子分をたくさん作ることが出来る
・子分にはドリルがついてるとなお良い

・・・・そう、この無人掘削機がMA(前天使級)の原型になったのではないでしょうか。
次回は「なぜMAは暴走したのか」について考察したいと思います。

鉄血考察




厄祭戦考察4「なぜMAは暴走したのか」
2018/11/14(水) 午前 1:56

前回「人類間戦争の対立構造」にて
地球と火星が火星ハーフメタルをめぐってMAの前身で争ったとしました。
今回はそのMAの暴走にいたるまでを考察します。

MAについては1「どのように起こった?」にて触れていますが、
この理論にいたるまでに否定しなければいけない仮説があります。
それは
「MAのAIは映画ターミネーターのスカイネットのようにAIが自身で進化し、
自らの機体を作り上げたものである」
というもので、
逆に言えば私はMAのAIはあくまで人間が作ったと考えているわけです。

なぜ前者の仮説が否定されるのか、
それはハシュマルの武装を見れば分かるとおり、人間を殺すために進化
したにはあまりに無駄が多く、効率からして毒ガスや核、ハッキングなど
で生命維持インフラを停止させるなどの手段を使うべきです。

また、もしAIがMA生産能力をも持っていたのなら、人類は滅んでいます。
ハシュマル(プルーマ無し)とバルバトス(リミッタ解除)がいい勝負なので
単純ですが、AI側はハシュマルを72機以上生産してしまえば勝てます。
人類がAIを頼らず1機1機丹精こめてMSをつくろうとも、機械のほうが早く、
何より休息もいらないので生産競争では絶対に勝てません。

ではいかにして暴走したのか?
つまるところ人類はいかにして暴走するようなAIを開発しMAに載せたのか

まず1「どのようにおこったか?」で触れたとおり、天使級MAに搭載された
AIは、前天使級を凌駕する性能です。
そしてその討伐には、暴走しないように再設計された同程度の性能のAIを
を使わず、阿頼耶識とMSを使った。
つまり同程度のAIは、技術的に開発することができなかった、あるいは、
独自の方法でしか作れず、その方法では暴走することが分かっていた
のどちらかだといえるでしょう。

ハシュマルの戦闘を見ての通り、リミッタ解除したバルバトスの阿頼耶識と
同等の運動性を有するAIを開発することはできなかったが、
作るだけならできた。私の仮説は
「天使級MAに搭載されたAIは人の脳のコピーである」です。

阿頼耶識は大戦が始まってすぐに用いられているようなので、阿頼耶識の
前身となる技術は当時既にあったはずです。
阿頼耶識は簡単に言えば、操縦者が指が動かしたいと脳で考えると、
機械側の指を同じように動かせるという仕組みですが、
脳が筋肉に伝えている信号と、機械がモーターやシリンダーを動かす信号は
噛み砕いていうなら言語が違うわけで、言わば
阿頼耶識技術は脳みそ語と機械語の翻訳ができているわけです。

ということはこの阿頼耶識システムが出来る過程に、
機械語による脳みその再現、つまり人間の脳を再現したAIがあったはずです。
人間に電極を繋いで、一つ一つの動きと脳の信号を解析するより、
機能はよくわからないが、機械で同じものを作ってみて、どの信号がどのような
動きに対応するかという開発のほうがはるかに効率的です。

脳をシステムに直接組み込むものであった阿頼耶識タイプEも、もしかしたら
大戦前のこうした技術を復元したものなのかもしれません。

つまり開発経緯は、
人間の脳をAIに応用しようという研究があり、ある程度まで進んでいた。
まだ未解明な機能も多いが従来AIをはるかに凌駕する脳コピーのAIができた。
ハーフメタル争奪戦で敵AIを上回るAIが必要とされた。
脳コピーのAIが採用され、ある程度の成果があり、量産された。
と解釈できます。

そして暴走の原因について、これはわかりません。
わかりませんが、暴走してもおかしくはないということです。

暴走といえば、グレイズ・アインですが。
グレイズ・アインは、意識が無く、ただ目的のために、機能しているだけの、
脳コピーAIとよく似た状況ではないでしょうか。
そして、もしグレイズ・アインに資源争奪戦の敵の排除の命令を出していたなら
様々な被害を省みず、目的だけに突き動かされ、暴走したように思えませんか?

この暴走のしかたならば、暴走したMA対策に同じAI搭載のMAをぶつけなかった
理由も、ハシュマルの生物的な動きをするAIも、機械の自動化があたりまえだった
時代に阿頼耶識システムがすぐに投入された理由も納得できるのです。
少なくとも、「あるとき機械が人類に反旗を翻した」や「狂気のマッドサイエンティスト
が、人類滅亡を目論んだ」などよりは現実味があります。

次回は「地球と火星どちらが暴走MAをつくったのか?」を考察してみます。

鉄血考察




厄祭戦考察5「地球と火星どちらが暴走MAをつくったのか?」
2018/11/16(金) 午前 1:15

前回「なぜMAは暴走したのか」にて
MAの暴走は阿頼耶識システムの前身とも言える、
人間の脳を複製したAIが暴走したという仮説を立てました。

今回はそのAIを投入した。つまり天使級MAは地球と火星の
どちらがつくったのか考察したいと思います。

まず、ハシュマルの自己修復能力について言えることが、
これは侵略側の装備であるということです。
防衛側は、自動で修理用ドックに行くよう設定したほうが効率的です。
そのぶん他の機能を持たせたはずです。

地球は火星の資源が欲しいのでもちろんのことですが、
火星も報復として地球側にMAを送り込む理由はありそうです。

これを踏まえ天使級MAを作った陣営の可能性、及び当時の状況として
1 地球で作られて、火星に送りこみ、火星で暴走した
2 地球で作られて、火星に送る前に、地球で暴走した
3 火星で作られて、地球に送り込こみ、地球で暴走した
4 火星で作られて、地球に送る前に、火星で暴走した。
このいずれかであると考えられます。

また、MAの暴走からMS+阿頼耶識の投入までに時間がかかり過ぎると、
人類サイドは人口が減れば減るほど不利になり絶滅してしまうので、
かなり短期間でMS投入をしたはずです。
しかし当時の科学力をもっても、複数機の天使型MAの猛攻を受けながら、
これまでAIに頼っていた戦術から、MSの開発・量産は無理があります。
ある程度、開発の余裕があったはずなのです。

つまり、MAは火星か地球のどちらかで暴走し多大な被害を受けました。
被害にあわなかった側は、アリアドネ通信を通じこの暴走を知り、
MAが被害を受けた側の人間を殺しつくし、自分達のいるところまで
惑星間航行をしてくるまでの間、MS開発及び生産の猶予があった。
この筋書きでしか、人類側は対抗のしようが無かったはずです。

ここで本編の火星におけるMA、AI、厄祭戦の認知状況を思い出してください。
MAについて一般人はおろか、知識層であるクーデリアも知らない様子でした。
AIについても同様で、マクギリスからMAが自動で戦闘するという説明を受け、
鉄華団一同はAIという発想すらありません。
厄祭戦については6話でおやっさんが、「地球で起こった〜」「地球をぶっ壊す
くらいのMSが〜」と語るなど、火星は主戦場ではなかったような認識です。

圏外圏でヒューマンデブリ、阿頼耶識手術などの違法行為があるのは、
G.Hの力が及ばない地球から離れた無法地帯だからだったはずです。
であれば、いくらG.Hが禁じようと便利なAIは、圏外圏で普及するはずで、
本編において対ブルワーズ戦にあったデブリの回廊は、ビスケット曰く
大戦時に放棄された戦艦やMSのリアクターが影響しているとのことでした。
ならばジャンクでMAのパーツが流通するとか、IAの機能が復元されるなど
されていてしかるべきなのです。

この火星における厄祭戦の歴史の失伝と、MAとAIの部品すら無い状況は、
G.Hが隠滅・抹消したと言うには無理があります。

となれば考えられる可能性として、
暴走したMAが火星のほぼ全ての人類を殺しつくして厄祭戦の歴史が失伝、
火星にて天使級MAは損害をほぼ受けることなく、前天使級を破壊しつくし、
その部品は全て自らの原料として再利用された。
これ以外にありません。

これならば、ガンダムをはじめMSによるMAの討伐は、ほぼ地球圏で行われ、
破壊したMAの残骸の回収が容易であり、MAのパーツやAIがジャンクとして
圏外圏で流通することを防げます。
(一部は圏外圏で討伐したでしょうが、数が少なければ回収は楽です)

大戦後に火星が、地球の経済圏からの統治を受けるという敗戦国のような
処理もうなずけます。

つまり厄祭戦初期の戦場は、火星で、火星はほぼ全滅したはずです。
ならばMSを作れる余力があったのは地球側でしょう。

そして火星でMAが暴走した時点で、MAの対抗策に、AIではなく阿頼耶識が
有効であると核心し、猶予があるうちにMS開発に踏み切った、しかも、
阿頼耶識の前身となる技術を持っているという条件を満たせるのは、
天使級を作った者だけです。
よってMSの開発と天使級の開発は同じ者たちが、

つまり地球側がMAをつくった。
前述した「1 地球で作られて、火星に送りこみ、火星で暴走した」
ということです。

次回は「MS開発史(いくつかの定義づけ)」について考察してみます。

鉄血考察




厄祭戦考察6「MS開発史(いくつかの定義づけ)」
2018/11/19(月) 午後 8:54

前回「地球と火星どちらが暴走MAをつくったのか?」にて
地球で作られた天使級MAは、火星に送り込まれた後、
暴走したという結論に至りました。
このMAと戦うために人類はMSを開発するわけですが、
いかにしてMSは開発されたのか、戦争の推移とあわせて考察したいと思いますが、
その前に、いくつかの定義づけを行います。

まず厄際戦の期間の区分けについてです。
公式HPのMS紹介やプラモデルの説明書から読み取るに
・厄祭戦中期にロディ・フレーム(以下F)が大量生産された
・厄祭戦中期にヘキサ・Fがロディ・Fに次いで多く生産された
・厄祭戦末期にガンダム・FがG.Hの前身によって開発された
・厄祭戦末期にヴァルキリア・Fが開発された。
このようなことが分かります。

よって以降厄祭戦は、
初期:MAの暴走から、ロディ・F生産開始まで
中期:ロディ・F生産開始から、ガンダム・F生産開始まで
末期:ガンダム・F生産開始から、全MA討伐まで
終期:全MA討伐から、ヴィーンゴールヴ宣言まで
と仮称し定義するものとします。

次にMAの数です。
セブンスターズの席次はMAの討伐数によって決定されています。
また、マクギリスが出土したMA確認のために火星に赴いた際、
ラスタルらはマクギリスがMAを倒し、席次が変わること懸念していました。

つまりMAを1機討伐するだけで順位が変わるということです。
同率順位を加味せず、各家の討伐差が1機と仮定し、
さらに1位にアグニカを加えた場合最低でもMAは
8+7+6+5+4+3+2+1=36機

セブンスターズのほかにも家門があることから、実際はもっと多いでしょう。
それも考慮し計算も簡単にするため、今後は

天使級MAは40機存在していたものとして扱います。

次回は「MS開発史(人類の猶予期間)」について考察します。

鉄血考察




厄祭戦考察7「MS開発史(人類の猶予期間)」
2018/11/22(木) 午後 7:57

前回は「MS開発史(いくつかの定義づけ)」で、
年代の分け方、MAの数は40機と定めました。

前前回述べたとおり、人類はMAに対抗するための準備期間を得ました。
今回はこの準備期間がどのくらいの期間であったか推定します。
まずはMAが火星を全滅させるのにどの程度の期間をかけたか計算します。

火星の特徴ですが、大きさは地球の大体半分くらいで、
1周2万km。半径は3390km。表面積は144,800,000 km2
地球と同じく地軸が傾いており、季節があります。
また、地球より太陽から遠いので、全体として気温が低いため、
都市は気温の高い赤道から温帯域に集中したはずです。

MAによる人類の虐殺方法についてですが、
まず人口密集地を優先して襲うことは本編で言われていたとおりです。
また、農業プラントを破壊した際は遠くからビームを撃っただけでした。
つまり厄祭戦当時、MAはジャマさえ入らなければ移動速度を落とすことなく、
ビームで次々に都市を破壊していたはずです。

ビームが直進するもので、ハシュマルのビーム発射口が地表30mにあるとすると、
ビームの射程はピタゴラスの定理から、射程=√(2*3390km)*√(0.03km)で、
14km。直径28km、計算が面倒なので25kmの円が射程距離となります。

またMAの地表での移動速度について、本編ではあまり速く無いと語られており、
巡航速度で50km/hと過程します。

MA同士が互いの射程がかぶらないように間隔を空け、40機横一列に並んだ場合
25km*40=1000km

この横隊は50km/hで進むので、1時間当たり50000km2が制圧されます。
この方法での火星全土の制圧には、
144800000/50000=2896(h)
2896/24≒120(日)
約4ヶ月を要した計算になります。

またMAが自動採掘を目的にしていたのなら、採掘した資源を持ち帰るため、
火星からの離脱、地球までの航行が可能なはずです。
問題は地球までどのくらいの時間を要するかですが、

地球と火星は太陽の周りを異なる速度で回る、時計の短針と長針のような関係にあります。
地球は内側で一周365日、火星は外側で一周687日かけて回っています。
短針と長針が重なるような位置にあれば近いですが、
時計の12時と6時のような位置にいるときは、遠くにあります。
距離にして、近いときは7834万km。遠いときで3億7753万km。
約5倍の差があり、その位置関係により地球-火星間の移動時間は異なります。
本項では人類側に配慮し、MAが地球を目指した時は最長距離にあったと仮定します。

本編二期においてSAUとの戦争編では、地球まで急いで3週間かかるとのことでした。
この時期が地球-火星間の距離が最短だったものと仮定し、
急がずに巡航速度で移動した場合30日かかるものとします。
地球-火星間の距離が最大、つまり最短の5倍あった場合、
軌道計算ができないので単純に等加速度直線運動で計算して、
√5倍の67日を要することとします。

つまり、合わせて6ヶ月強が地球側に与えられた準備期間でした。

次回はこの「厄祭戦初期のMS」について考察したいと思います。

鉄血考察




厄祭戦考察8「MS開発史(厄祭戦初期のMS)」
2018/11/25(日) 午後 10:10

前回は「MS開発史(人類の猶予期間)」で
人類はMS開発などのMA対策の為の猶予は6ヶ月程であったと分かりました。
今回はその6ヶ月間の地球側の動きを考察します。

まずMA暴走発覚当初、天使級MA開発を担当した組織は暴走原因を公表している筈です。
一般人はともかく、少なくともMA対策にたずさわる者に暴走原因が脳のコピーAIであると、
伝わらないと、同じように脳のコピーAIを使った更に新しいMAで対抗しようと考えてしまい、
6ヶ月の準備期間はより強いMAの開発に費やされることになってしまいます。

また、合わせて阿頼耶識技術が対MA戦に有効であることも公表しているはずです。
MA技術が既に確立している状況で、あえて人型兵器を開発する理由は阿頼耶識使用を
前提にしなければ成り立たない話です。

当時の各陣営の状況としてですが、
開発の方向性は定まっていましたが、恐らく組織はまとまっていなかったでしょう。
現在判明している厄祭戦時代のMSの各フレームに共通する型式番号は以下の通りです。

 ASW-G-00 ガンダム・F
 共通でASWの3文字とそのあとにG、ソロモン72柱の序列順の二桁数字が其々振られる

 V00-0000 ヴァルキリア・F
 Vは共通。次の数字2桁は機体名のワルキューレ姉妹の生まれ順と思われる。
 後ろの数字4桁は日付の可能性がある。判明している3機の型式の後ろ4桁は、
 4-3桁目が12未満の数字、2-1桁目31未満の数字になっている。
 偶然この組合せになる確率は12/100*31/100=0.0372で、
 更にそれが3機連続する確立は(0.0372)3=0.00005147884で0.005%。
 そも9機しか生産されていないにしては桁数が多い。

 UGY-R00 ロディ・F
 UGYとRは共通、数字は判明している3機の番号は40前後で、
 それぞれ近い数字になっていることから数字は開発順に振られている可能性が高い。
 逆に言えば40以上の種類が開発されいる。
 年式の可能性もあるが、その場合「38〜45」と少なくとも7年間厄祭戦が続いていること
 になる。MAの性質上小康状態というものがありえないので、7年間昼夜問わず戦闘を
 行い拮抗状態維持するのは不可能であることから、年式の可能性は否定できる。

 IPP-0000 ヘキサ・F
 IPPが共通。ユーゴーは数字部が5桁であり、サンプル数も少なく法則性が見られない。

このように、各フレームの型式番号の命名規則がバラバラです。
地球が一丸となって共同開発をしたなら、型式番号の命名規則くらいそろえて当然です。
これは様々な国家、あるいは組織、企業が別個に開発していたからではないでしょうか。

なぜ人類皆で力を合わせることはなかったのか。
これはMAの討伐を国家間、組織間で競っていた可能性があります。

未来を考えれば当然のことで、MAの撃退後は再び火星の資源の争奪戦になり、
その際はいかにMA討伐に力を出さず温存したかがカギになるでしょう。
しかし皆サボタージュをしたのでは人類が滅んでしまいます。
そこでMAの討伐数で火星の所有権の序列をつけるというような取り決めをしていたのでは
ないでしょうか。
そうすれば各陣営、先を争ってMA対策を講じることでしょう。

これにはもう一つ根拠があり、セブンスターズの序列はMA討伐数で決められたようですが、
裏を返せばMA撃墜をカウントするしっかりした仕組みがあったわけす。
実戦では共闘のようなこともあったでしょうから、撃墜数の案分のような
セブンスターズに加われるかどうか第7位と8位の差で雲泥の差があるわけですから、
あらかじめの取り決めが無くては戦後大いにもめてしまいます。

しかしこうした取り決めを大戦末期にできるほど余裕があったかといえば疑問で、
となれば既に合った既存の取り決めが変化したと考えたほうが自然です。

つまり、
当初討伐数による火星覇権の序列ルールを定めたが、当人らはろくにMAの討伐ができず、
国や経済圏の枠にとらわれない組織、G.Hの前身がMAを殆ど討伐したので、
前ルールは無効になり、撃墜数カウントシステムだけが、G.Hの序列ルールに引き継がれた
というわけです。

では肝心なMSの設計などはどうだったか、材料が殆どないので考察も殆どできませんが、
これまで人型兵器の概念が無いところから、MAを基礎に開発したのであれば、
初期のMSにはマニュピレーターは無く、銃器などは固定武装で、
足のあるガンタンクのようなものだったかもしれません。

厄祭戦の初期の対MA戦闘は、こうした試作MSと地球に残っていた前天使級を併用した、
実戦による実用試験を兼ねたもので、地球に向かってくる途中のMA迎撃を試みたはずです。
そしてデータを持ち帰らなくてはならないので、それなりの犠牲が払われたでしょう。
この迎撃戦で在庫の前天使級MAは使い切ってしまった筈です。

こうした実戦を経て、対プルーマ用の銃器は各機体間で取りまわししやすいものに、
対MA本体用には、鈍器のような質量兵器に、そしてそれらを用意に持ち替えできるよう、
人の指を模したマニュピレータを採用した現在のMSの形、つまりロディ・Fに代表される
厄祭戦中期に生産された汎用型MSの量産が始まったはずです。

次回は「MS開発史(厄祭戦中期の期間)」について考察します。

鉄血考察




厄祭戦考察9「MS開発史(厄祭戦中期の期間)」
2018/12/1(土) 午後 11:46

前回は「MS開発史(厄祭戦初期のMS)」について考察しました。
今回もまず厄祭戦中期において期間がどれくらいであったかを推測してみます。

手がかりとして、ユーゴーのプラモの説明書に
「厄祭戦終結時にまで残っていた個体は全体の数パーセントにも満たなかった」
との記述があります。ここからヘキサ・Fの厄祭戦時の総生産数を推測、
総生産数から生産期間、つまり厄際戦中期の期間が推測できそうです。

ヘキサ・Fの残りが「数パーセント」ということは1〜9%ですが、文字面どおり
「満たなかった」なら1%に満たない、小数点以下ということになってしまいます。
小数点以下なら「1%にも満たなかった」と表現するはずですから、おそらく
この表現は「数パーセントにしか満たなかった」の間違いでしょう。
よって本項では真ん中をとって5%で計算することとします。

まず本編現在のヘキサ・Fの数を特定します。
ヘキサ・Fは希少ではありますが、二期においてSAU防衛軍が軍MSとして採用しており、
軍で採用する場合は運用上、同規格のものを複数所持していると考えるべきです。
その上で希少なヘキサ・Fを採用したということはもともとSAUは、
多くのヘキサ・Fを所有していたということでしょう。

では一つの経済圏が所有するMSの数はどれくらいなのでしょうか。
経済圏が独自の戦力を持ち始めたのは鉄華団によるG.Hの信用失墜が原因なので
配備が始まってからまだそれほど時間が経っていません。
G.Hの信用が無くなったということは、これまで駐屯していたG.H.SAU支部に
代替して治安維持、防衛を行えるように配備を進めていたはずです。
ということはG.H支部と同程度の規模のMSをそろえなくてはなりません。

本編においてラスタルとの戦いに敗れ火星に敗走する際、マクギリスの
「我々にはまだ火星支部の戦力がある。
ハーフビーク級が10隻、モビルスーツは40機余り…」
との言動からG.H支部が所有するMSは40機余りであることが伺えます。
つまりSAU軍が所有していたヘキサ・Fの数は40機程ということになります。

そのほかのヘキサ・Fとして劇中に登場しているのが、夜明けの地平戦団に3機。
またドルトコロニーの反乱の際に外壁工事用のヘキサ・Fが使用されました。
MSで蜂起したのはドルト1,4,5であり、劇中描写で格納庫に6機確認できることから、
各コロニーに同数あったとして18機。
ジャスレイ戦にも多数登場しており、劇中「ユーゴー8、9番機大破!」との台詞が
あるので少なくとも9機。

ここまで合計70機。
外伝は未読なのでわかりませんが、その分と厄祭戦後から劇中現在にいたるまでに
失われた数も多目に加味して、合計100機で計算します。

この100機が、厄祭戦で残った5%とすると、厄祭戦中に生産されたヘキサ・Fは
2000機という計算になります。

次に2000機という数を生産するのにかかった期間ですが、
テイワズの量産MS獅電の生産期間が参考になりそうです。

本編二期1話において、獅電3機がテイワズから鉄華団に優先的に配備されました。
1話で動作テストが行われており、テイワズから搬入されて間もないことが分かります。
その翌日、おやっさんと三日月はバルバトスを受け取りにテイワズに向かいます。

この理由についてオルガは「二週間後のお嬢さん案件だ」と言っていることから、
夜明けの地平線団の襲撃は二週間後だったことになります。
つまり、三日月らは二週間で火星-歳星間を往復したことになります。
この際、追加の獅電数機を一緒に運んできており、この追加分の獅電は
二週間で生産されたということになります。

MSの量産は物がかなり大きいので車のようにコンベアによるライン生産はできません。
おそらく大型の旅客機のように、各パーツを別にライン生産し、広大な工場施設で
一斉に何機も組立てる方式で生産されたはずです。

またパーツ生産よりも組立のほうがはるかに時間を要するので、実際に生産速度を
決めるのはこの組立の工程であり、生産量は組立速度より同時に組立できる数、
つまりは組立工場の広さに比例します。

この広さに関しては、いかに未来の技術を使おうとも増やすことはできません。
現代とそう変わりないはずです。
よって獅電は組立に二週間を要し、広ささえあればもっと量産できるということです。

ヘキサ・Fを生産した国ないし組織が、どの程度の力をもっていたかは不明ですが、
対戦中に最も多く生産されたロディ・Fに次ぐ生産量ですから当時世界第二位です。
それなりの経済力、工業力があったとは間違いないですが、どのくらいの広さの
工場を所有していたかまでは分かりません。かなり広いということだけです。

本項ではこの組織が、現世界において最大容積の飛行機組立工場であるボーイング社
ボーイング・エバレット工場と同規模の工場を所有していたと仮定します。

同工場の床面積が、39万8千m2このうち大雑把に1/3がクレーンなどの作業機械スペース、
もう1/3が組立待ちのパーツ置き場、残り1/3が純粋なMS組立スペースとすると、
純粋スペースが約13万m2。MS1機の組み立てに必要な面積を約20m*20m=400m2とすると、
1回の組立可能MS数は、130000/400=325機。
2000機の生産には、2000/325=約6回
MSの組立工程は2週間なので、12週間あれば約2000機を生産できます。

つまり厄祭戦中期は約3ヶ月あったということになります。

次回は厄祭戦中期に開発されたMSについて考察してみます。

鉄血考察




厄祭戦考察10「MS開発史(厄祭戦中期のMS)」
2019/1/20(日) 午後 11:55

前回は「厄祭戦中期の期間」について考察しました。
今回はその中期MSについて考察してみたいと思います。

前回のとおり中期の期間は3ヶ月と短いです。
しかし判明しているMSの型式番号を見ると、
UGY-R38 スピナ・ロディ
UGY-R41 マン・ロディ、ランドマン・ロディ
UGY-R45 ガルム・ロディ
といったように、ロディ・Fの型式番号の数字が仮に開発順であったなら、
僅か三ヶ月で45種類が開発されていることになり、一見不自然です。

ただ当時の状況からしてMAは惑星間航行を終え地球圏に入っているはずで、
その数は約40機。

その戦術はMAの行動原理が人口密集地を優先して襲うというものであり、
手分けをしたり、多方面から攻めたりするような複雑なものではなかったでしょう。
ハシュマルのように火星に残っていた(行動原理からして地球から撤退したとは考えにくい)
例外もあったでしょうが、基本的にMAは全機で大挙して押し寄せてくるはずです。

この場合、短期間での総力戦が予想されますから、
地球側は戦争中に戦況に合わせて新型開発や改修などをする暇はありません。
なのであらかじめ複数の開発プランを用意しておいたのではないでしょうか。

仮にロディ・Fバリエーションが45種として、この45種がそれぞれ量産されたのではなく、
数ある種類の初期生産ロットの機体のうち前線で効果的だったものだけが増産され、
実際に量産されたのは数種だった、あるいは生産すらされなかったものもあったかもしれません。
MSのフレームが共通で艤装の違いにより性能の多様性もたせるという生産形態も、
これを裏付けているといえるでしょう。

ではどのようなタイプのMSが量産されたのでしょうか。
対MA戦術から逆算する形で考察してみたいと思います。
劇中でマクギリスが語っているように、対MA戦においては本体とプルーマの分断が慣用です。
ただ当時の主戦場は宇宙空間であったはずで、地形などを利用した分断工作は不可能です。
加えて宇宙空間では見通しがよいので、超長距離からのビーム攻撃も考慮する必要があります。

これらを踏まえると厄祭戦中期における対MA戦術は、大雑把に
1 ナノラミネートを施した強襲装甲艦でMAからのビーム攻撃を退け接近。
2 接近後に展開したMSが小火器でプルーマを全て破壊、または足止め。
3 MAを包囲しつつ近接質量兵器でMAの制御中枢ユニットを破壊
の3行程となります。

1について補足というか、根拠を示しておく必要があります。
実弾の艦砲射撃あるいはビーム兵器による飽和攻撃も、対MA戦でとりうる戦術の選択肢に
入りそうなものですが、公式HPのイサリビの項に
「G.H以外の戦艦は、厄祭戦時に用いられた強襲装甲艦であり〜」
とあり、実際劇中で見られたG.H以外の戦艦は同艦ばかりでした。

G.Hはダインスレイヴなどを禁止していますが、艦種やビーム兵器を禁止していないので、
戦後に同艦以外の艦艇が処分ないし制限されたというわけでもないでしょう。
ということは大戦時の艦艇のほとんどは強襲装甲艦であったと言えるわけです。

またハシュマルの武装を見ても、対MA戦術として艦隊砲撃戦が有効ではないことが分かります。
MA(天使級)は、対MA(前天使級)用の兵器であり、その武装は対MAに最適化している筈です。
そのハシュマルにはミサイルや火砲などが搭載されておらず、
これは前天使級に対しミサイルや火砲は効果的では無かったということです。
おそらくビームを受けた際の誘爆回避のため搭載されなかったものであり、
同じ理由で人類サイドはMAに対し砲撃戦を臨まなかったものと思慮されます。

ただプルーマに対しては、リアクターを搭載しておらず、ナノラミネート装甲が無いため、
ビーム兵器は有効なように思えますが、ナノラミネート装甲がビームを無効化する理由が
ナノラミネート装甲の鏡面構造によるものなので、ビームの無効化は他の材質でも可能なはずです。
前天使級もビームを使用できたであろうことから、プルーマにもナノラミネート装甲以外の方法で
ビーム対策が施されていなくては、対前天使級の兵器としてはおかしいわけです。
よってMAに対してビーム攻撃もされなかったと言えます。

これらのことから、プルーマを倒すためにMSに小火器を携帯させる必要があったが、
接近する前にビームを受け誘爆しないよう、装甲艦で守りつつ距離をつめる戦術が
採択されたであろうことが推測できるのです。

ではこの戦術に適したMS、つまり当時運用されたであろうMSのタイプを推測してみます。
結論から言えば、殆どが中近距離汎用型です。
面白みの無い考察ですが、理詰めで考えるとこうなります。

どういうことか消去法で考えてみましょう。
まず、当該戦術からして除外できるタイプは、「偵察型」です。
エイハブウエーブの影響でアリアドネを通じてMAの接近は容易に感知でき、またMAが奇襲などの
複雑な戦術を用いないため、索敵能力に特化させたMSは意味が無いからです。

次にズサやヘビーアームズのような「高火力重装型」も否定できます。
これは上記したとおりビームを受けた際の誘爆のリスクが大きいことが主な理由です。
サンダーボルトのFAガンダムのようなサブアームにシールドを持たせて運用すれば
ビームを防ぎつつ砲撃が可能ですが、機動力が大きく落ちて阿頼耶識の優位性が失われます。
ブースターの増設などでこれを補うと、戦闘継続能力が落ち防衛戦には向きません。
本編においてプルーマはランドマン・ロディのマシンガンで十分倒せていることからも、
あえて重装型は必要なかったでしょう。

また「長距離狙撃型」も否定できます。戦術が強襲であることもそうですが、有効兵器がありません。
厄祭戦末期に開発されたガンダム・Fの一番機のバエルに搭載されているのが単なる電磁砲で、
ダインスレイヴではないことから、中期当時においてダインスレイヴはまだ完成に至っていません。
前身となるものはあったでしょうが、長距離からナノラミネート装甲を貫通しうるものは未完成でした。

逆に存在していたであろう物として、バエル・ソードと同等の武器があったはずです。
上記のとおりバエルに小型・軽量でありながら十分な切れ味を持つ同剣を採用できたということは、
厄祭戦中期には既に同等の技術が確立されていたはずです。
しかしバエルと同じく末期に開発されたヘルムヴィーゲはバスターソードを採用していることから、
厄祭戦当時においてもバエル・ソードの素材は希少で全機にいきわたるものではありませんでした。

またバスターソードでもなければMAを殺しきれないわけですから、ヘルムヴィーゲのような、
リアクター出力をフレームに多く配分する「近接型」も存在しえたはずです。

そして最後に大半を占めたであろうMSが、「汎用型」MSです。
対プルーマ用に小火器を装備し、余計な装備がないことから戦闘継続能力が高く、
MAに止めを刺す用の近接型の機体が途中でやられても、その武器を拾って近接戦闘にも転向可能、
これを量産しないはずがありません。

大戦中期は、ロディ・Fやヘキサ・Fをはじめ、各陣営ごとに多種のMSフレームが開発され、
それぞれのフレームに特色を持たせつつも、基本的に生産されたものの多くは汎用機でした。

次回は厄祭戦の末期について考察します。

鉄血考察




厄祭戦考察11「MS開発史(厄祭戦末期・前置き)」
2019/1/22(火) 午後 10:06

前回は厄祭戦中期のMSについて考察しました。
今回からは厄祭戦末期についてMS開発の観点から考察したいと思います。

末期については、中期のように期間をMS生産数からの特定、
つまりガンダム・Fの生産数から期間を割り出すことができません。
なぜならばガンダム・Fはその名前が冠する悪魔の序列が開発順序であることが、
明らかになっており、後半の機体はその装備などから戦況の変化や、
技術の成熟を待って開発された節が伺えるからです。

分かりやすいのが前回も取り上げたバエルの電磁砲です。
開発順序1位のバエルには単なる電磁砲が採用され、その発展型であろう
ダインスレイヴが搭載されていません。
しかし現在判明しているガンダム・Fのうち、64位フラウロスと66位キマリスに
ダインスレイヴが搭載されていることから、少なくとも1位から64位の間に
電磁砲技術が発達するだけの間隔があったということです。

また戦況の変化も推測できます。
29位のアスタロトは大気圏内飛行を想定した飛行形態への変形が採用されています。
つまり大気圏内で運用する状況、MAと大気圏内での戦闘を前提に開発されており、
MAの地球降下を許すという、人類サイドにとって危機的状況にあったことが伺え、
状況が変化するという、それだけの期間があったということです。

このようにガンダム・F72機は、連続して同じペースで開発された訳ではないのです。
しかし不可解なのは後半の機体がある程度、機を窺って開発する余裕がある一方で、
MAの地球降下を許しており、切迫する状況があったということ。
そして、それほどまでして開発に時間をかけた後半の序列の機体の戦果よりも、
一番最初に作られたバエルの戦果が最大であったという事実。
これらの不合理性が末期の厄祭戦を紐解く手がかりになりそうです。

このようにガンダム・F、ヴァルキリア・Fは同型機が複数判明していことから、
その機能・装備などから開発経緯、当時の戦況の推定が可能です。
次回からは極力時系列に厄祭戦末期当時の状況などを考察してみます。

鉄血考察




厄祭戦考察12「MS開発史末期・初頭」
2019/1/25(金) 午後 1:28

前回は厄祭戦末期の前置き、言わば解き方について触れました。
今回は末期の初頭においてなぜガンダム・Fなどが必要とされたのか、
厄祭戦末期初頭当時の開発背景を考察します。

厄祭戦末期の状況について、本編内での描写では、
「300年前、長く続く厄祭戦のために人々は疲弊し人類存亡の危機に瀕していた。
人類が生き延びるためには誰かが戦争を終わらせる必要があった
戦力の均衡を破る圧倒的な力、人間の能力を超えた力でな
同じ志を持つ者たちが集まり、国や経済圏の枠にとらわれない組織が編制された
そして彼らは人類最強の戦力であるMSの運動性を最大限に高めるシステム
すなわち阿頼耶識システムを作り上げた。
そしてその力を限界まで発揮できる72機のMSを」(22話マクギリス)

と語られており、末期当時は

・厄祭戦の長期化
・疲弊による存亡の危機
・戦力の均衡
があったので、

・国などの枠にとらわれない組織が、
・ガンダムを作った

ということは確かなようです。
(阿頼耶識もこの時に作られたと読み取れそうですが、これについては
いずれ阿頼耶識システムを考察する際に触れます)

まず「長期化」についてですが、現実における戦争の長期化は、
理由は様々ですが、実際に戦闘が行われない期間の増加によって起こります。
しかし対MA戦においてはこれがありませんので、ここで言う長期化は
数十年に及んだという意味ではなく、当初短期総力戦のつもりでいたが、
その目算を超えてなお戦闘が継続したという意味ととらえていいでしょう。

次に「疲弊」です。
もちろんこれは比喩で人材や資源などが不足したという意味です。
厄祭戦によって総人口の四分の一が失われたとあるので、これは火星の犠牲を
含めた数かどうかにもよりますが、人材の不足はありそうです。
しかし阿頼耶識は戦闘経験が無くともパイロットとして運用できることが強みですから、
パイロットの不足は無いでしょう。では技術者の不足でしょうか。
MAとの戦力は均衡していたようですから、もし技術者が不足した場合は、
MSの運用が滞り、戦力の均衡が崩れてしまうのでこれもありません。
人材は不足していたものの、存亡の危機とまではならないようです。

よって疲弊とは資源の不足、特に火星ハーフメタルの不足と考えられます。
火星ハーフメタルはエイハブリアクターの運用に欠かせないものですが、
当時の状況では火星から新たに発掘してくることができません。
そもそも火星の資源をめぐって起こった争いが発端ですから、ハーフメタルは
地球の需要に対して供給が不足気味であったはずです。
そのような状況でMSの生産を続け、貯蔵分を吐き出した後は、
MS以外の、つまり発電など人々の生活に必要なエイハブリアクター運用に使用している
ハーフメタルをMS用に転用しなければなりません。
当然電力停止や、電波障害などにより、これまでの生活水準が維持できなくなり、
人々の生活は犠牲になったのです。

これならMAとの戦力を均衡に保ったまま、資源不足により疲弊し、人類存亡の危機、
一部の文明レベル後退という条件が同時に満たせるはずです。

次に「均衡」ですが、そもそもなぜ均衡してしまったのかということです。
当然人類サイドが、後攻、後だしなわけですから、勝てる見込みがあったから、
MSを開発生産してMAに対抗したのであって、勝てる見込みが無ければ、
外宇宙に逃げるなり、MAが戦闘想定をしていないであろう海上に(火星に海は無い)
生活の場を移して、時間をかけてより効果的な対抗手段を生み出すはずです。
この見込みが外れる何らかの戦術の変化が、MAにあったということです。

本編においてハシュマルは、執拗にMSのコックピットを狙うという行動を見せました。
主戦場は地球であり、火星に残ったハシュマルはMSとの戦闘経験が殆ど無いはずです。
それにもかかわらずハシュマルが対MS戦術を持っているということは、
MA同士は学習したことを共有しており、アリアドネ通信を通じ火星のハシュマルもまた
これを共有していたということになります。

つまりこの執拗にコックピットをねらう戦術は後から獲得したもので、逆に言えば
最初の頃はMSのコックピットは狙われず、MS帰還率が高かったということです。
この帰還率の高さを見込んで人類サイドは戦略を立てており、MAが対MS戦術獲得後は、
MSの帰還率が大きく下がり、必然増産が要求され、資源不足に陥ったのです。

これは推測ですが、MA=人類殺戮兵器はミスリードであり、
ハシュマルも今なお、人を殺しているという認識は無いのかもしれません。
つまり学習により獲得した効率的な戦術が、施設を破壊するというものであり、
その施設がたまたま人類が生存に必要なものだっただけということです。
現にハシュマルが目覚めた際、生身のオルガ達は一切攻撃対象にしていません。

MSのコックピットをねらっているのも、中のパイロットを殺す為ではなく、
機械学習的にコックピット部分を狙うと効率がいいと判断したからです。

こうして当初の目論見が外れたことから、G.Hの前身となる、国や経済圏などの
「枠にとらわれない組織」が編制され、既存のMSより高性能、高稼働率で、
これ以上大量のMSを増産してハーフメタルを消費しなくても済むようなMS、
つまりガンダム・Fが開発されたというわけです

次回はそのガンダム・F活躍したであろう厄祭戦末期・中葉の頃について考察します。

鉄血考察




厄祭戦考察13「MS開発史末期・中葉」
2019/1/27(日) 午後 4:03

前回は末期初頭、ガンダム・Fが必要とされた背景について考察しました。
今回はその活躍と同時期に開発されたヴァルキリア・Fについて考察します。

まず開発されたバエルをはじめとした初期に開発されたガンダムについてです。
バエルやバルバトス、ハシュマルに電源マーク様の刻印が共通して確認できることから、
当然これは同じ組織が開発したということを意味していると考えていいでしょう。

MAの暴走を起こしたような組織が、MS開発に参入できるのか疑問ですが、
人類存亡の危機であり、そういった枠組みを取り払ってこの組織は構成された以上
十分考えられる話です。
また、ガンダム・Fのみが阿頼耶識リミッター解除を使えるという点からも、
MAのAIが阿頼耶識の元になったと考えれば、MAとガンダム開発に深い関係が
あってもおかしくありません。

バルバトスが序列8位なので、序列上位のガンダムはこの同じ開発元かもしれません。
本項では仮にこのグループをカイエル一派とします。

このカイエル一派による戦果は、
対MA戦の戦力の拮抗を人類優勢に傾けるものだったはずです。
そうでなくては人類存亡の危機に瀕していながら、序列後半のガンダムが
ダインスレイヴ完成を待つ余裕があったとは考えにくいからです。

序列上位のガンダムは殆ど明らかになっておらず、グシオンを含めたとしても、
3機だけで、性能面での共通点は唯一汎用型であるということだけでしょうか。
(グシオンはフルシティが当時の性能を一部再現していることから汎用型と推定)
最も中期MSの多くが汎用型でありその潤沢なフィードバックを元に開発するなら、
汎用型になるのは必然ともいえるでしょう。

また29位のアスタロトには大気圏内での戦闘を前提とした装備が確認できることから、
カイエル一派により対MA戦は大きく勝ち越したものの、一部のMAを打ち漏らし、
地球降下を許しています。おそらくは資源不足による中期生産型MSの数が足りず
防衛線を形成できなくなっていたのでしょう。
人類の滅亡は彼らによって既の所で止められていたとも言えます。
以降の戦局は、いかに散らばったMAを各個撃破するかというものになります。

また同時期にヴァルキリア・Fも開発されたわけですが、こちらはどうでしょう。
ガンダム・Fが「枠にとらわれない組織」によって開発されたなら、逆説的に
ヴァルキリア・Fは「枠組みにとらわれている組織」が開発したということになります。
そしてその生産数が9機にとどまったということはガンダム・Fに対し、出遅れ、
つまり量産化に入る前にバエルをはじめとしたカイエル一派が確実な戦果を上げ、
ガンダム・Fの方が対MAに有効であることを知らしめたということになります。

こちらのヴァルキリア・Fを開発した陣営を北欧一派と仮称します。
北欧一派は開発競争に敗れたわけですが、同じ派閥の権力争いをしているわけでも、
市場シェアを取り合っているわけでもありません。
しいて言えば限られたハーフメタル配分の取り合いですが、
大戦末期の人類存亡の危機でありながら、枠組みにこだわる程度に余裕のある組織です。
またそんな局面で新型MSを開発しようというわけですから資源にも余裕があるはずです。

そんな北欧一派が、開発競争に敗れたからと言って戦後に採用された、
ヴァルキリア・Fの流れを汲むグレイズの採用されるまで手を引いていた筈はありません。
当然、このG.H前身のグループ(以後、前G.Hとする)に後から入ろうとしたはずです。
無論それなりの手土産を持ってです。

ガンダム・Fは2基のリアクターによる高出力で一騎当千を狙った設計、対して
ヴァルキリア・Fは軽量化によるエネルギーの効率化を狙った設計です。
どちらとも開発の背景・コンセプトは同じで資源の節約、
つまり自身は撃墜されず、敵は撃墜することを目的としている筈ですが、
なんとなくヴァルキリア・Fの方は決め手に欠けるように思えます。

そこでダインスレイヴ技術は北欧一派が抜きにでていて、
ヴァルキリア・Fはダインスレイヴ搭載を前提に作られていたならどうでしょう。
軽量化と効率化は余剰出力を電磁投射砲に使用するつもりだったということです。
現にオルトリンデには未完成のようですがダインスレイヴが採用されていたようです。
命名を北欧神話から引用(厳密には違いますが)しているところも共通しています。

こうして北欧一派が前G.Hに合流することで、ガンダム・F序列後半の機体に
ダインスレイヴが採用されることになったという訳です。

次回は末期末葉北欧一派が合流した前G.Hはどのようなガンダム・Fを開発しMAと
どのように戦ったのか考察します。

鉄血考察




厄祭戦考察14「MS開発史末期・末葉」
2019/1/29(火) 午後 0:39

前回は厄祭戦末期の中葉、北欧一派の合流までを考察しました。
今回はその北欧一派の動向を中心に考察します。

同派参入によりガンダム・F序列後半の機体は新たな技術が加えられたはずです。
前半機体と後半機体を比較することで加わった技術や思想などを推測できます。

序列前半の特徴は前回述べたとおり汎用型でダインスレイヴ非搭載ということ、
そして序列後半のガンダム・Fの特徴としてはダインスレイヴはもちろん、
56位グレモリーの
・超防御力を誇るナノラミネートコート
66位キマリス、71位ダンタリオンの
・換装システムによる様々な状況への対応能力
などが挙げられます。

当時の状況として戦力的にはカイエル一派のおかげで人類側に優勢になっているはずです。
その結果を受けて後半の機体は、長距離射撃や、超防御力、潤沢な装備という、
確実に、だが安全にMAを倒すということを目的に開発されたように思えます。
つまり北欧一派の参入でMA討伐による戦後の権力闘争の段階にシフトしたということです。

地球に侵攻したMAの多くはカイエル一派が倒しましたが、
討ち漏らしやハシュマルのようなはぐれMAが依然として残っており、
それらを各地へ赴いて討伐する必要があり、戦後の覇権を欲する者たちが、
こぞって討伐合戦にのりだします。

この討伐合戦は他の者を出し抜いてMAを破壊しなくてはなりませんが、
自身を危険に晒すわけにはいきません。なにせ戦後の覇権のために戦うわけですから。
カイエル一派の頃は人類存亡の危機なので命を賭して戦うことがコンセプトでしたが、
北欧一派参入後はMAは倒したいが自分は生き残らなくてはならないという思想になります。
その結果が安全な超長距離からの射撃や、超防御力をもって自身の保護を目的とした
機体設計に現れているように思います。

また、この覇権争いに参加して勝利した者の多くは北欧一派の割合が多いように思えます。
というのも、G.Hの名家と呼ばれる貴族らがその家の象徴として保管しているMSの多くが、
序列後半のガンダム・Fまたはヴァルキリア・Fだからです。判明しているだけで、

ナディラ家 グレモリー(56位)
ボードウィン家 キマリス(66位)
ザルムフォート家 ダンタリオン(71位)
ファリド家 グリムゲルデ(本来同家のガンダム・Fが保管されている蔵にあったもの)
ジジン家 オルトリンデ

であり、(ウォーレン家のアスタロトは大戦後に月面で発見されたものなので除く)
ガンダム・F序列上位や、それ以外のMSを保管している貴族の例が一例もありません。
また、当時1機でも多くのMAの討伐したかったという痕跡としてフラウロスが挙げられます。

本編においてフラウロスは機体発掘時に死体が乗っていたという描写が無く、
海老川氏の発掘時のラフ案にも、コックピットブロックが無いと記載されています。
また同じ地層からはハシュマルが発掘されており、周囲の土砂には
ダインスレイヴ弾頭のようなものが多数刺さっていました。

ここから予想される当時ハシュマルを屠る際に使用された戦術は、
無人のフラウロスを囮に、軌道上からのダインスレイヴ飽和攻撃でその地形ごと
生き(?)埋めにするというもので、戦後の自身の家の象徴になるMSを手放してでも、
MA討伐数を稼ぎたかったという気持ちの現れともとれます。
(もちろん単純にフラウロスが消耗して囮にしか使えなくなっていた可能性もあります)

フラウロスも64位の序列後半の機体であることから、北欧一派だった可能性が高いです。
ファリド家が本来ガンダムが保管されている筈の同家の蔵にガンダムが無かったのも
こういった理由からかもしれません。

厄祭戦末期の末葉は、こうしたMA撃墜スコア争奪戦が行われ、その結果として
地球圏はもちろんのこと圏外圏においてもMAが駆逐されつくしたと考えられます。

次回はこれまでの末期考察を踏まえた、厄祭戦末期の期間を考察したいと思います。

鉄血考察




厄祭戦考察15「MS開発史(末期の期間)」
2019/2/7(木) 午後 10:13

前回は厄祭戦末期、全てのMA討伐までを考察しました。
今回は末期の考察が長くなったので末期全体をふりかえりつつ、
また、MA地球降下後の考察を忘れていたので合わせて、
厄祭戦末期がどの程度の期間であったかを考察します。

まずガンダム・Fの生産開始を末期の始まりとすると、
考察9で求めたとおり、MSの組立が2週間で、ガンダム・F初期ロット序列十数位までが生産されます。
また整備側の完熟や現地への配備・展開も含めて、生産してすぐ実戦というわけにはいきません。
ただ状況も逼迫していること、習熟の必要の無い阿頼耶識システムであることを踏まえて、
本項ではガンダム・F生産終了から実戦まで1週間程度と見込み計算します。

実戦投入後は戦力均衡を破りMAに対し優位に立ち回ることができたわけですが、
この戦闘期間よりも、討ちもらした一部のMAを地球で討伐することに要した期間の方が長いはずです。
よってこの戦闘期間は無視できるものとして、次に進みます。

問題はどの程度のMAが地球のどの地域に降下し被害をもたらしたのかという点ですが、
戦後の4つの経済圏の国境から推測できます。

まず本編とかかわりの深いアーヴラウとSAUから見てみます。
アーヴラウは現在のロシアと、アメリカのアラスカ州、カナダ。
SAUはアメリカとそれ以南の南アメリカ全て。
またグリーンランドは南極などと同じようにどこの国の領土でもないようです(4話地図参照)

奇妙なのはアメリカとカナダが分かれていることです。
現実におけるアメリカとカナダの関係は米英戦争以来良好であり、この関係は2世紀ほど続いています。
これを破ってカナダがロシアと接近。またアメリカが経済的に劣る南アメリカと組むとは考えにくいです。
アメリカとカナダを分かつ何かがあったと考えるのが自然でしょう。

また31話冒頭において、アーヴラウとSAUの戦争は国境地帯バルフォー平原で起こったと語られています。
本編におけるアンカレッジやエドモントンなどは実在する都市ですが、この平原の名前は存在しないものです。
つまり鉄血世界において近年新たに名前がつけられた土地である可能性があります。

そこで、MAの降下地点がカナダとアメリカ国境付近だったと考えたならどうでしょう。
同地点はMA迎撃のため地形が変わるほどの激しい戦闘が行われ、あたらしく平原になりました。
戦闘地域以北の住民はベーリング海を挟んでロシアへ、以南の住民はカリブ海を挟んで南アメリカへ、
それぞれ避難したとすれば、上記のようなアーヴラウ、SAUの国境となったのもうなずけます。
(MAは設計上、海上戦闘を想定しておらず、住民の避難は海を越えるほうが有効である)

次にアフリカンユニオンですが、ヨーロッパ全域と中東、アフリカ大陸で構成されています。
グリーンランドが含まれていないことから、デンマークが力を失い手放した可能性があります。
またフォークランド、サウスジョージアがSAUに含まれており、同じ理由でイギリスも力がありません。
スヴァーバルがアーヴラウに含まれているので、ノルウェーも力を失っているでしょう。
しかしポルトーフランセがアフリカンユニオンに含まれているのでフランスは健在の可能性があります。
これらのことからフランス以北の北ヨーロッパにもMAが降下し、被害をもたらした可能性が高いです。
(ドーバー海峡は狭い所で34kmしかないため、MAはイギリスまで移動可能だった可能性がある)

また興味深いのが旧ソ連領をふくむ中東がアフリカンユニオン側についているという点です。
なんとなく偏見としてロシアなら戦後のごたごたに乗じて不凍港の確保、あわよくばアラビア海にまで、
と中東にまで食指をのばしたいと考えそうですが、それに至っていません。
もっとも厄祭戦前において、エイハブリアクターにより原油価値が大きく下がり中東地域が廃れたもしくは、
ロシアも原油輸出が基幹産業なので厄祭戦前に既に大きく力を落としていた可能性があります。

最後にオセアニア連邦ですが、現在の新疆ウイグル自治区などを含んだ中国、インド、モンゴル、日本、
東南アジア、オセアニアなどで構成されています。
オセアニア連邦は劇中でほとんど語られていないため手がかりが少ないのですが、注目すべきは名称です。
同連邦の構成は大東亜共栄圏のブロックとほぼ同じですが、名称にアジアのアの字も含まれません。

アフリカンユニオンにも言えることですが、経済圏を布いた際に一番力を持っていた、
又は復興の中心になった地域の名前がその経済圏の名前になっていると考えられます。
つまり厄祭戦直後はオーストラリア、ニューランドなどが力をもっており、
逆にアジアはかなり広範囲において力を失っていたと言えるでしょう。

気になる日本ですが、千島列島がオセアニア連邦領土に含まれています。
すでに大戦前に北方領土を取り返している可能性もありますが、
少なくとも戦後に北方領土の領有権をロシアに渡さなかったという点において、
ロシアに負けない程度には力を維持できたようです。

地図について、シドニーにコロニー落としの痕跡のようなシドニー湾が見られます。
これをどうとらえるか、つまり宇宙世紀と本作が同時間軸の物語なのかという問題なのですが、
もし同時間軸とすると北米穀倉地帯にも星の屑でコロニーが落とされているので
前述のバルフォー平原の前提がくずれることになります。
ただその場合、北米はもちろんのこと、ダブリン、ラサにも地図上においてコロニーが落ちた痕跡が
描かれていてもよさそうなものですがそのようなものは見られません。
よってこのシドニー湾の描写についてはパロディ的要素が強いのではないかと考えます。

すこし長くなりましたが、MAの降下地点として可能性が高いのは、
アメリカとカナダの国境付近、フランス以北の北欧、アジアのどこか、この3点です。
なおかつ降下地点の当該国が戦後の経済圏においてイニシアチブが取れなくなるほどの被害を与えた、
つまりはそれなりの期間において破壊行動を続けたということです。

仮にMAが北アメリカの東西を横切った場合、約4000kmあるので20時間要します(巡航速度50km/hとする)
火星より都市が多いでしょうから最短距離とはいきませんが、数日以内に対応しなければ、
国の一つや二つは簡単に無くなってしまいます。(特に国土の狭いヨーロッパの国)

これを踏まえると1ヶ月は長すぎる、1週間では大量のMSの装備換装と戦力配置・展開が対応しきれない、
よって2〜3週間程度で降下したMAを討伐されたといったところでしょう。

地上に降下したMAを討伐した後は、火星に残ったハシュマルのようなはぐれMAを討伐しなければなりません。
最初にMAが火星から地球に向かったときから半年が過ぎているので地球と火星の距離は縮まっています。
位置関係として時計の針で例えると厄祭戦初期のころは地球が12時の位置、火星が6時の位置にいましたが、
半年後には地球が6時の位置、火星は9時位置にいることになります。
すると双方の距離はおよそ最長の半分*√2程度になっており、考察7と同様の式から
54日ほどで火星に着きます。

また火星到着後のMA討伐に要した期間は移動期間よりも圧倒的に短いはずなので無視できます。
するとガンダム・F生産開始から前MA討伐までの期間はおよそ2ヶ月ということになります。

次回は厄祭戦終期について考察します。

鉄血考察




厄祭戦考察16「MS開発史(厄祭戦終期・前)
2019/2/11(月) 午後 11:05

前回は厄祭戦末期の期間などについて考察しました。
今回は厄祭戦終期について考察します。

厄祭戦の終了はP.D.0001にG.Hが発したヴィーンゴールヴ宣言(以降VG宣言)を持って終了です。
よって全MA討伐からこのVG宣言までの間もまた厄祭戦に含まれます。

P.D.0001のVG宣言はG.H発行のものですから、そのときは既にG.Hが存在しており、
厄祭戦が終わる前に前G.Hから現在のG.Hに名を変え組織として変わったということになります。

また加えて同宣言は、実際の世界で言うところの多国間条約になりますが、
この場合は、主に条約が結ばれた場所がその条約の名前になります。
このことから当該宣言は、現G.H地球本部の巨大メガフロート「ヴィーンゴールヴ」
で結ばれたものと考えていいでしょう。
ということはこの同施設も厄祭戦が終わる前に既に建設されているということになります。

VGは[「経済圏への干渉を防ぐため、海洋上に建設された(参照wiki)」となっていますが、
本編4話の英語表記の年表によれば4経済圏の編制はVG宣言後であることから、
VG建設がVG宣言より前であることと矛盾し、文明が後退するほど疲弊した戦後すぐに、
巨大メガフロートを建設できるというのもおかしいです。
よってこれは建前で、戦後G.Hが広めた偽りの建設理由であることがわかります。
ではどのような経緯でVGは建設されたのでしょうか。

VG宣言当時G.HにとってVGが重要な施設であったことは間違いありませんが、
おそらく対MA戦の前線基地のような勇ましいものではなかったはずです。
厄祭戦の主戦場が宇宙であることが予想できるにもかかわらず地上に基地をおいた場合は、
MSなどの兵器の輸送に大きな労力がかかり、非合理的だからです。
おそらく前線基地の役割をしたのは月です。

厄祭戦前は火星に前天使級を送り込む、MA生産工場のようなものがあったはずで、
前述したとおり地球で作ってそのつどマスドライバーで打ち上げるのは無駄ですから、
必ずそれは地球外にあったはずです。
厄祭戦におけるMA迎撃はこの工場を元に拠点構築をするのが合理的です。

本編においてG.H最大戦力のアリアンロッドが月を拠点としていることからも、
大規模戦力の拠点にはしっかり地盤のある月が適しているからでしょう。
よって厄祭戦当時の生産工場や前線基地は月にあったと考えられます。

ではVGとは一体何のために作られた施設なのか、
おそらくそれはノアの箱舟的な目的でつくられたのではないでしょうか。

MAは火星侵略の為に設計されたものですから、海上戦闘は想定されていません。
有事の際は地球における安全地帯は海洋上といえます。
この建設には多額の費用がかかり、当然出資者は優先的に箱舟に乗る権利を得たはずです。
そしてこれを建設した組織はその莫大な資金を得ることになりMS開発すらも可能だった、
その組織こそ北欧一派だったのではないでしょうか。

つまりVGはMA討伐後に建設されたのではなく、
実際はVG建設に関わった北欧一派が、その利益でMSなどを開発し、
前G.Hに加わり現G.Hに名を変え、戦後にVGを条約締結の場に使ったと考えられます。

他の国や組織が疲弊して、枠組みを取り払って集まらねば戦えなかったにもかかわらず、
北欧一派が独自でMAに対抗しようとしたのは、こうした資金的余裕からと考えると納得できます。

そしてまた、厄祭戦終了のVG宣言を、北欧一派の本拠地ともいえるVGで行ったということは、
G.H内において北欧一派は大きな権力をもっていることになります。

MAと戦うために、同じ志を持つ者が集まり、国家などの枠にとらわれない組織を作った。
これが前G.Hだったはずです。しかし本編の現G.Hは家柄や既得権益にとらわれた組織になっています。
これが300年の腐敗によるものなのか、北欧一派が加わったことが原因なのかは分かりませんが、
ヴィーンゴールヴは北欧神話の宮殿で、セブンスターズの家紋も北欧神話の神獣由来のもの、
ギャラルホルンという組織名も北欧神話です。

ここまで揃えば、前G.H内で権力闘争が起こりその結果北欧一派が権力を簒奪したのは明白です。
その結果として組織名を「ギャラルホルン」と名乗ることとしたのでしょう。
また、その権力闘争は人類存亡の危機の最中に起こったとは考えにくいことから、
MA討伐後からVG宣言までの間に起こっており、ここから先は人対人の戦争が始まるわけです。

次回はこの人類間戦争について考察します。

鉄血考察




厄祭戦考察17「MS開発史(厄祭戦終期・後)」
2019/2/16(土) 午後 4:30

前回は前MA討伐後の厄祭戦終期の人類間戦争の始まりについて考察しました。
今回はその続きとなります。

MA討伐後に人類同士が争う理由はそうありません。火星の利権くらいなものです。
北欧一派はVG建設に出資した支配者階級出が多いわけですから戦後の火星利権は欲しいわけです。
しかし私欲のために英雄のアグニカカイエルとその一派を排除しては反発を招いてしまうことから、
カイエル一派を追いやる大義名分が必要になります。

それは天使級MAを開発した責任の追及です。
考察13で述べたとおりカイエル一派は天使級MAを開発した組織の流れを汲んでいると考えられます。
そのカイエル一派が多くのMAを駆逐し、成果として火星利権を手にするとなった場合、
意図的にMA危機を起こした。つまりマッチポンプの疑いをかけることができます。

ただ多くのMAを倒した功績は事実だし、実際アグニカは英雄になっています。
そこでカイエル一派の功績をすべてアグニカの功績に付け替え、アグニカはG.Hの象徴として残し、
アグニカを除くカイエル一派をMA危機の責任追及、糾弾すれば、上手く勢力図を書換えられます。

出典が不明なのですが、大戦末期にはアグニカは阿頼耶識に繋いでいないと意識が保てなかった。
という記述があるそうです。(グレメカ?)
もしそのような状況であれば、非戦闘状態を狙ってアグニカを掌握とすることは可能に思えます。
そのうえで、「責任をとって組織代表を辞任し、バエルを乗りこなせた者を後継者とする」と
アグニカが言ったことにしてしまえばいいわけです。

全てのMA討伐後、北欧一派はアグニカを掌握した上で、MA危機の責任の所在を公表、
ある程度の他組織の賛同を得た上でカイエル一派のいる月面基地をダインスレイヴで強襲、
(小川正和Pのインタビューにて月面でダインスレヴ使用の可能性について示唆)
前G.Hからカイエル一派を排除し、主権を得た北欧一派は名をG.Hに改めたというわけです。

一部のカイエル一派の生き残りは火星などの圏外圏に逃亡、
その際バルバトスやアスタロト、グシオンなどのガンダム・Fは各所で放棄されることになります。
カイエル一派が月に本拠地を置いたことから、その生き残りを月の片割れと解釈するなら、
主人公の三日月という名前に繋って面白いと思います。

加えてカイエル一派を排除したことで、ツインリアクターの調整技術や阿頼耶識技術の失伝、
阿頼耶識技術の圏外圏への漏洩などにも説明がつきます。
世界に平穏が戻り、VGに避難していた実力者は戦後処理でさらに富を集め、経済圏形成で
火星からの富の吸い上げシステムを構築、G.Hとは以後も昵懇となるわけです。

これで厄祭戦開始から終戦までを、明らかになっている事実をもとに推測し、
矛盾無く本編P.D年代に繋げられる形をとることができたように思います。

ただ本考察、厄祭戦終期の期間の特定は困難です。
カイエル一派の生き残りの逃亡がどの程度の期間におよんだのか、仮にその期間がわかっても、
VG宣言が生き残りを全て屠った後にされたものなのか、月面攻撃後すぐ行ったのか不明だからです。
一つ言えるのは、月面攻撃はダインスレイヴを大量導入しており、火星のハシュマルにも
同様の手法が用いられたことから、同じ部隊が用いられた可能性が高いです。
となればこの部隊がMA討伐後に火星から戻ってくる時間が必要ですから、地球-火星間の
片道分の移動分期間を要しているだろうといえます。

次回はMS開発史に載せきれなかった厄祭戦の世界観に関する考察をまとめます。

鉄血考察




厄祭戦考察18「tips」
2019/2/23(土) 午後 4:54

前回でMS開発史は終わりです。
今回は厄祭戦に関する考察で短いものや、
この先深堀しようかなと考えているものについて挙げてみます。

1 火星の重力・地磁気
本来火星の重力は地球の3分の1程度しかなく、火星で育った人間は地球で歩くことができず、
火星においては何事もフワフワした運動をしなければならないのです。
また、火星には地球における地磁気のようなものが現在の科学においては観測されていません。
よって火星地表はかなり宇宙線による被爆を受けており本来人が住むには適していません。

よって鉄血のオルフェンズにおける火星のSF考証は不十分であると言わざるをえません。
ただし鉄血世界の科学力で本編のような火星環境を再現できないわけではありません。
それを可能にするのがエイハブリアクターの存在です。

本編12話で語られているようにエイハブリアクターは重力を発生させる性質があります。
また火星を一周する巨大なコイルを作り、リアクター電力をもってすれば、
地磁気に匹敵する磁場を作り出せるはずです。
火星全域に重力、磁場をめぐらせるために何機のリアクターが必要になるのか
わかりませんが技術的には可能であるといえます。

ただやはり、そうした技術、設備などの描写が作中で確認できません。
(私の確認不足だったらごめんなさい)
もし描写するなら、同12話におけるリアクターによる重力発生についての説明の際は、
ビスケ「今艦内の重力を作っているのもエイハブリアクターですよ?」
ではなく、
ビスケ「艦内の重力や火星の重力を作っているのもエイハブリアクターですよ?」
にするとか、
火星の大地を背景に描く際、地中にコイルが埋められているような施設を描写するなど、
案外簡単にできたはずです。
にもかかわらず描写されていないということは本作のSF考証から漏れていたものと
結論づけるよりほかありません。

2 火星の生き残り
厄祭戦において蹂躙された火星ですが、人間が根絶やしにされたかというとそうとは言い切れません。
本編36話において、ハシュマルのクリュセ侵攻を聞いてクーデリアが
「開拓当初に作られたシェルターがあったはずです。でもそれはとてもこの町の全員を〜」
と語っています。
この開拓当初が厄祭戦前の開拓を指すのか、厄祭戦後の再開拓を指すのかにもよりますが、
前者である場合、少数でしょうが火星の住人の生き残りはいたはずです。

また、考察12で述べたとおりMAの攻撃対象は人間そのものではなく、文明施設が攻撃対象になり、
結果として人間が死んでしまい、これをもってMAが人類殺戮兵器になってしまっていた場合は、
文明から離れ、原始的な生活をしている分にはMAの攻撃対象にならないはずです。
意図して組まれたプログラムではないでしょうが、文明社会を否定する神罰的で面白いです。

ハシュマルが火星に残ったのも、こうした少数の生き残りがなんらかの活動をしていたから
なのかもしれません。

3 コックピットの謎
これは今後阿頼耶識システムの考察をする際に詳しく語ります。
謎だけ先に提示しておくと、バルバトス、アスタロト、フラウロスはコックピットが抜かれた状態で
放棄されていたということです。
カイエル一派か、北欧一派か、あるいは別の組織なのかは不明ですが意図的に抜いているわけです。

コックピットブロックだけを抜いておく理由としては、
・ 誰かに見られては不味いものがあった
・ 機体本体よりも価値のあるものがあった
このどちらかでしょう。

G.Hが阿頼耶識を禁じているので、厄祭戦の栄光の陰に阿頼耶識手術があったことを隠したかった
G.Hの意向でコックピットブロックごと証拠隠滅したとも考えたのですが、
もしG.Hがそれを望んだなら機体ごと回収しなかった理由がわかりません。
つまり後者である可能性が高いのです。

4 アグニカの魂
こちらも今後阿頼耶識システム考察の際に詳しく語ります。
バエルの伝説について、
・バエルにはアグニカの魂が眠っており
・バエルを操るものがG.Hを手に入れる
・これまでG.Hの歴史においてバエルを起動できた者はいない
というものですが、

「バエルの起動」に関しては戦後すぐであれば、阿頼耶識技術が完全に失われておらず、
また鉄血世界において富裕層の寿命は200歳にも及ぶものであることから、
作中セブスターズの老人らは厄祭戦を経験した世代の次の世代であるはずです。
バエルの操縦に阿頼耶識が必要だということを忘れていたというのはどう考えても不自然です。
バエルの起動はたとえ阿頼耶識を使っても通常の方法では動かせなかったのではないでしょうか?

また、「魂が眠っている」については少なくともアグニカ死後にアグニカ以外の誰かが広めたものです。
G.Hとしては、支配体制を強めるためにもアグニカの魂云々を伝承させるのは不都合に思います。
また実際、死者の魂が眠るのは墓で機体そのものというのも変です。
例えばビスケットはMWに搭乗していて死亡しましたが、ビスケットの魂がどこに眠っているかと、
問われれば火星の丘の上にある墓です。

G.Hが権力を完全に掌握するなら、別の場所に墓をたて「アグニカの魂はここに眠る」とし、
バエルは「アグニカから受け継いだ」という形をとるべきです。
そうしないということは、そうしないだけの理由が、
例えば本当にアグニカの魂が眠っているなどの理由があるはずなのです。

5 ギリシア一派?
厄祭戦で勝ち組に立ったのは北欧一派だけだったかというとそうでは無いかもしれません。
ガンダム・Fの装備の名称にはギリシア神話から用いられているものもあります。
例えばダンタリオンの装備、バイデント、ケラウノス、アイギスなどがそれに当たります。

またユーゴーの装備の110mmマシンガンは、月のラグランジュ点を拠点にするヘパイストス社製であり、
月のラグランジュ点であれば地球圏であることからある程度の優良企業ともいえます。
このヘパイストスとはギリシア神話の鍛冶の神様のことです。

ギリシア神話の多様さから引用がしやすいので、単なる偶然かもしれませんが、
ヘパイストス社の前身が、北欧一派同様に前G.Hに加わっており、ダンタリオンを以って活躍して
北欧一派ほどではないものの、地球圏で武器生産の商売ができる程度に地位を得たとも考えられます。

本項tipsは思いついたら書き足していこうと思います。
更新したら見出しか何かに分かるように記載します。

次回は少し先になると思いますが阿頼耶識システムについて考察したいと思います。

鉄血考察




厄祭戦考察19「阿頼耶識システム(意識システム?)」
2019/3/24(日) 午前 0:20

前回は幾つか雑多なtipsをまとめました。
今回からは阿頼耶識システムについての考察です。

宗教についてあまりくわしくはないので、浅い理解で説明するのも恐縮ですが、
wikiなどを調べて私が理解した限りでは、

阿頼耶識とは仏教用語であり、
例えば人が何か「物」を認識する際には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を使うわけですが、
その心をそれぞれ、「眼識」「耳識」「鼻識」「舌識」「身識」と呼び、
その「物」を知る、認識する心を「意識」と呼びます。
さらにそれら「識」の潜在意識下で働く、無意識というか自我のようなものを
「末那識」「阿頼耶識」というようです。

噛み砕いていうなら、
「表に出てくることのない心の最深部」
という認識でおおよそ間違っていないはずです。
以後仏教用語としての阿頼耶識と、システムとしての阿頼耶識を区別するため、
本考察では仏教用語の阿頼耶識を「八識」と表記します。

劇中における阿頼耶識システムについて考えてみると、
自分の体を動かすように意のままに機体を動かすシステムですので、これは上記した仏教用語の
「意識」にあたり、これでは阿頼耶識システムではなく、意識システムになってしまいます。

これについて複数考察サイトなどが指摘していますが、これは阿頼耶識ではないという否定に留まるか、
または意識を超えたシステムという意味で名づけられたなどの解釈どまりであり、
阿頼耶識システム=八識システムで納得のいく解釈を見つけることができませんでした。
なので本考察ではこれに納得いく解釈を加えてみようと思います。

以前考察4においてMAの人工知能は人間の脳のコピーであるという仮説を立てました。
この人間の脳のコピーであったからこそ暴走したという結論に至りましたが、
もしその暴走の原因が八識の欠如にあったらどうでしょう、つまりはこうです。

前G.Hは戦闘能力の優れたA.Iの開発を求めた結果、人間の脳を機械的に再現するという手法に至りました。
しかし脳の全ての機能を把握することができず、「八識」の部分を機能させることができなかったのです。
火星における戦況膠着の打破、あるいは火星の支配権競争のため、前G.Hにとって新A.I開発は急務でした。
そこで勇み足で八識が欠如したこの人工の脳を採用し、これを搭載した天使級MAが火星に投入しました。
結果として目的の為には手段を選ばない、つまり倫理のようなものが欠落し暴走に至ったという訳です。

優れたA.Iを開発したが、八識の部分を再現できず暴走してしまう。
ならば当然、足りない部分は人間を乗せて補おうという発想になるはずです。
八識の足りないA.Iと八識を持つ人間の脳を有機ディバイスで繋ぐ、
このシステム名を「阿頼耶識システム」と名づけたなら、何の矛盾もありません。

この仮説を前提にすると、これまで阿頼耶識システムは、

     パイロット---(阿頼耶識システム)---機体操縦

と解釈されていましたが、これはミスリードで、本来、

     パイロット---(阿頼耶識システム)---人工脳---機体操縦

という機構であるということになります。

次回はこの仮説の補強するいくつかの根拠について語ります。

鉄血考察




厄祭戦考察20「阿頼耶識システム(人工脳の搭載)」
2019/3/28(木) 午後 9:38

前回、阿頼耶識システムは、
1.パイロット---(阿頼耶識システム)---機体操縦
ではなく、
2.パイロット---(阿頼耶識システム)---人工脳---機体操縦
である可能性について語りました。

ここからはこの仮説を補強する根拠などについて述べます。
まず第一に上記2.の人工脳は、1.の仕組みでもほぼ同等のものが必要になるという点です。
生体と機械が情報をやり取りする以上、必ず翻訳機が必要になります。

生体は神経などを介し、電気信号により思考、運動などの情報伝達を行っています。
しかしその電気信号はコンピュータなどに用いられる二進数による、言わば「機械語」とは
まったく異なるものです。

よって阿頼耶識システムには、機械語の電気信号を発することができる人間の脳、
もしくは人間語の電気信号を理解することのできる機械のいずれかが必要です。
となれば当然、簡単にできる後者の方、機械に人間語の翻訳機能を持たせるでしょう。

この技術は単純なものであれば、筋電義手など現在の世にも存在していますが、
劇中における阿頼耶識システムを搭載したMSのアクロバティックな動きや、
ましてやそれをパイロットの思考とのタイムラグ無しに行い、
果てにはバルバトスのリミッター解除で見られたような、
システムの出力切り替えをパイロットの思考でコントロールできるともあれば、
それはもう人工脳と同程度の能力を有した翻訳機に他なりません。


第二に阿頼耶識システムがパイロットの生体情報を認識かつコントロールできている点です。
第13話において昭弘の弟、昌弘がクダルのハンマーを受けて死ぬところですが、

昌弘「なんだろう、不思議なんだ、痛いはずなのに、すごく、でも頭ん中すぅ〜ってして・・・」
昭弘「(阿頼耶識か)」

と述べています。このシーンは
昌弘は自身の死に至る負傷を痛覚が認識していながら、辛くないという状態にあり、
昭弘はあまりの痛みに脳が痛みを抑制し、感覚がなくなっている通常の状態とは異なると判断し、
阿頼耶識システムが何らかの作用をしていると推測したものと解釈できます。

つまりこの時、阿頼耶識システムは
昌弘という生体の、操縦に関係ない痛みという信号を認識し、その痛みが操縦の妨げになると判断し、
なんらかの方法で昌弘の脳に作用し、痛みを辛くない状態に変えたということです。
この挙動は阿頼耶識システムが人間の生体機能に詳しいA.Iが搭載していることになります。
これなら三日月の半身不随がバルバトスに繋ぐと治るという現象も説明可能です。

三日月の半身不随はバルバトスとの接続により励起されたナノマシンが焼ききれた神経を補っている
という説もありますが、私はあまり支持していません。
というのも、三日月が視力も失っているからです。

三日月の手足の不随は、手足の神経か、脳の情報を手足に伝える途中つまり脊髄など、または脳そのもの、
この3つのいずれかに不具合が生じたために起こっていると言えます。
しかし視神経は脊髄を介さずに脳から直接出ている脳神経系なので、原因は脊髄ではありません。
またシステムからのフィードバックが手足などの末梢に直接影響するとも考えにくいことから、
不具合は脳そのものにあることになり、構造の複雑な脳の神経細胞をナノマシンが補えるのかという点から
この説には対しては懐疑的であると言わざるをえません。

すこし話がそれましたが、つまりは
阿頼耶識搭載MSには機械でありながら人間の生体機能を理解し、本来人間の脳が判断し発する信号を、
代わりに判断し発することができる機能が搭載されているということになります。

以上のとおり、阿頼耶識システムは少なくとも上記の二点、つまり
・複雑な人間の脳の電気信号を機械語に翻訳できるA.Iが搭載されている
・生体生理機能をその人間の脳に代わって機能させることのできるA.Iが搭載されている
ということはもはや疑いようがなく、このA.Iを人間の脳を模した人工脳と言わずなんといえるでしょう

よって私は阿頼耶識システムの人工脳搭載説を提唱するものであります。

次回はこの人工脳を前提にパイロットにかかる負荷について考察します。

鉄血考察 鉄血考察



厄祭戦考察21「阿頼耶識システム(脳への負荷の正体)」
2019/3/31(日) 午後 11:18

前回は人工脳の可能性を補強する理論を展開しました。
今回はこの人工脳搭載を前提にした場合のパイロットにかかる負荷の正体を考察します。

そもそもこの劇中の負荷についてですが、
機体からのフィードバックにより脳が耐えられない負荷がかかる
という意味で広く認識されていると思います。劇中においても

モビルスーツからの情報のフィードバックはモビルワーカーの比じゃねぇ。
下手したらおめえの脳神経は・・・
(第2話おやっさん)

バルバトスの阿頼耶識は三日月用に限界までリミッターを外してあんだ!
おめぇじゃ情報量に耐えられるわけねぇだろうが!
(第17話おやっさん)

とあるように、
これら描写や、バルバトスのリミッター解除後の三日月の後遺症などから、
一見、阿頼耶識システムは
・機体側からのフィードバックが増加すればするほど、性能が上がり、
・この代償としてパイロットの脳神経はダメージを受ける
というように見えますし、そのように解釈している人が多いように思います。

しかし脳とは本来負荷がかかればパフォーマンスは低下するもので、
負荷がかかるほど性能が向上するのは不自然です。
本来フィードバック情報は必要最小限にむしろカットすべきです。

しかしハシュマル戦の後に三日月は半身不随になっており、バルバトス側からの情報が脳に対して
何らかの負荷が働いたということはほぼ間違いありません。
このバルバトス側からの情報とは機体の挙動に関する情報ではなく、
人工脳の思考のフィードバック情報だとしたらどうでしょうか。

そもそも人間の脳が考えたことを機械が読み取って機体を操縦する方式ではMAには勝てません。
機械語で考え機械語で動くことのできるMAに対し、翻訳機を介さなくては機械を操作できない
人間では反応速度に大きな差があるからです。

MAのように暴走せず、MAに対抗する兵器の理想条件は、
機械語で考え機械語で動くシステムであり、その手綱である八識を人間が握っている状態です。

方法としては、
MAと同様のA.Iを使い、緊急時はパイロットがマニュアル操作に切り替える方式と
パイロットの脳と同一構造の人工脳を用意し、パイロットの脳と連動させる方式が考えられます。

前者は単純な仕組みで非常に合理的ではありますが、対天使級MAに改良型の天使級MAではなく、
MSを使ったということは、当時の人間でもA.Iの暴走の原因が分からなかったということです。
つまり何をもって暴走状態とするかも判断できなかったため、見かけ上暴走していないようでも、
実は既に暴走状態にあり、電源を入れた瞬間味方を撃つかもしれないといった兵器に対して
不信感はぬぐえず運用されなかったということでしょう。

後者の仕組みは人工脳が戦闘に関する思考を行い、機械語で機体に指示を出します。
また、人工脳はパイロットに対し当該思考を同時平行してフィードバックします。
これによりパイロットは自分の脳で考えているように錯覚するはずです。

まるでパイロットが人工脳に操られているような印象を受けますが、
人工脳はパイロットと同一ですから、その思考は結局パイロットの思考と同一のものです。
しかし人工脳は八識機能が無いので、パイロット脳の思考と齟齬が生じることがあり、
その場合はパイロット脳側の思考を優先される。このような仕組であれば、
MAとの反応速度の差は無く、八識機能を維持でき暴走もありません。

しかし人工脳がパイロットの脳の性能限界を超えたパフォーマンスを発揮した場合、
人工脳とパイロットの脳は連動しているため、強制的に限界以上の処理をしていることになり、
大きな負荷がかかる筈です。

また人工脳とパイロット脳の効率的な連動の為には、両者が同一構造である必要があり、
どこかで人工脳はパイロット脳をスキャンしている可能性があります。
戦闘よりむしろ、このスキャン時にパイロット脳に大きな負荷がかかるのかもしれません。
これらが三日月に後遺症をもたらした負荷の正体として考えられるのではないでしょうか。

次回は疑似阿頼耶識について考察します。



厄祭戦考察22「阿頼耶識システム(疑似阿頼耶識)」
2019/4/3(水) 午後 11:26

前回は脳への負荷について考察しました。
今回は主に疑似阿頼耶識の正体について考察したいと思います。

まず通常の阿頼耶識ですが、劇中におけるリミッター解除機能の差はあれど、
ガンダム・Fに搭載されたものとマンロディなどに搭載されたものは、
基本的に同じ仕組みの阿頼耶識システムと考えられます。

しかしキマリス・ヴィダールなどに搭載された疑似阿頼耶識は疑似ですから、
阿頼耶識ではありません。似て非なる仕組みのものということになります。
劇中43話におけるヤマジン・トーガの言によると
「アイン・ダルトン三尉の脳をベースにした、いわば疑似阿頼耶識」
「あれには彼の残された脳と共に彼の阿頼耶識を補助システムとして搭載している」
「ガエリオがフレーミングした敵対者に対しそのシステムが強制的にMSの挙動をコントロールする」
とのこと、

つまり疑似阿頼耶識はアインの脳+グレイズアイン搭載の阿頼耶識で構成されているということです。
ここで劇中のグレイズアインとアイン本人の状態を思い出してみましょう。
アインは瀕死の重傷を負い、20話において医師から
「臓器の大半が機能不全となり、全身の壊死も始まっ…」
「延命を望むならどうしても機械的、工学的な…」
と言われており、
重要器官のほとんどが失われ、無事なのは脳くらいであるが意識は戻らず、
おそらくは、いわゆる脳死状態であると推測できます。

この状態から、阿頼耶識によりMSを通じてですが会話ができるようになっているわけですから、
付随になった三日月の右半身をバルバトスの人工脳が動かしていたのと同じように、
グレイズアイン搭載の人工脳がアインの(残った)体を生かしていたような状態と考えられます。

しかし人工脳は八識を持っていないため、アインの脳の八識部分を動かすことが出来ず、
エドモントンにおける暴走を起こしたということです。
予断ですが、43話バエル宮においてヴィダールと戦った三日月が、回り込むような挙動を見て
「今の動き…知ってる奴だ」
と言っています。

この回り込み挙動は、グレイズアインやヴィーダルも見せましたが、
実は対ハシュマル戦でも、マクギリスがハシュマルに同じような挙動で回り込まれています。
演出上、後ろに回りこむという挙動は相手のスピードが速いということを表現するために
よく使われるものですが、この挙動はA.Iに特徴的な動きであるとも考えられます。
その場合、この時のアインの動きは人工脳の影響を強く受けていたといえるでしょう

さてグレイズアインの状況は分かりました。
これをほとんどそのままキマリス・ヴィダールなどに搭載していたというわけです。
しかしこのままでは八識が無く、暴走の恐れがあるためガエリオを乗せ、
攻撃対象を選定するという八識部分をガエリオが補うという方式をとったわけです。

確かにこれならば、阿頼耶識システムとは仕組みはまったく異なりますが、
人工脳の手綱を握り制御しようという構造はとてもよく似ています。
まさに疑似阿頼耶識と言えます。

疑似阿頼耶識はリスク無しで阿頼耶識と同等の力が使えることから、
厄祭戦でも疑似阿頼耶識方式を使えばよかったのではないかとも考えられますが、
ガエリオが疑似阿頼耶識を制御できたのは、生前のアインと良好な関係が築けており、
アインの脳を模した人工脳も彼の命令ならばちゃんと聞くような状態で、
同じ仕組みを以ってしてもガエリオ以外では制御できなかったのかもしれません。

また、あくまでガエリオが"フレーミングした敵対者に"とあるので、彼が視覚の中心に
収めた対象を頚部のプラグを経由してアインが攻撃対象として選定しているだけですから、
多角的な攻撃や統率の取れた集団攻撃、不意打ちなどには弱いと考えられます。
MAはプルーマを多数率いているので当然条件としては不利です。

これらが厄祭戦で疑似阿頼耶識が用いられなかった理由と考えられます。
次回はバエルの阿頼耶識について考察します。



厄祭戦考察23「阿頼耶識システム(バエルの阿頼耶識・前編)」
2019/4/7(日) 午後 10:29

前回は疑似阿頼耶識について考察しました。
今回はバエルの阿頼耶識について考察します。

考察18で述べたとおり、劇中においてバエル以外のガンダム・Fは厄祭戦当時の
コックピットブロックが残っておらず、幾つかのガンダム・Fはコックピットブロックが
抜かれた状態で放棄されていたということが分かっています。
つまりそこには抜き取る必要のある「重要なもの」があったと考えられます。

バエルは唯一厄祭戦当時のコックピットブロックを有しており、上記の「重要なもの」が
残されていると考えられます。劇中における他の阿頼耶識搭載MSとの差を比べることで、
「重要なもの」の正体が分かるはずです。
ではマクギリスの乗ったバエルには他のMSとどのような差があったでしょうか。

1 パイロットの痛覚遮断ができない
2 リスク無しで疑似阿頼耶識と渡り合える
3 性格変化

顕著なものとしてこの3点が挙げられます。

まず1についてです。
あまり取り上げられていませんが、バエルの阿頼耶識は痛覚遮断ができていない可能性があります。
46話のバエルとキマリスの戦いにおいて、マクギリスはアルミリアから受けた左手の怪我により
バエル左手の剣を弾かれて落としています。

また、49話においてはガエリオに負けた後に単身で船内に乗り込んでいますが、確認できる負傷は
腹部に機体の破片が貫通しているもので、最終話のダインスレイブを受けた昭弘と同程度です。
この傷であれば阿頼耶識による痛覚遮断で、バエルに乗ったままラスタルを討ちにいけるはずで、
それをしていないということは傷によりバエルを動かせない状態であったということです。

どちらも既知の阿頼耶識の仕組みであれば痛覚を和らげる機構が働き、戦闘に影響しないはずです。
現に劇中においてアストン、シノ、昭弘、三日月らは重症を負いつつも戦闘継続しています。
しかしマクギリスにおいては自身の痛覚が機体制御に影響しており、少なくとも言えることが、
バエルの人工脳からはマクギリスの体を制御するフィードバックが行われていません。

次に2についてです。
多くの考察やwikiなどでバエルが圧倒的な力を発揮したのはマクギリスが自身に施した、
オリジナルの阿頼耶識手術によるものであるという解釈が殆どですが、
劇中44話の三日月の問いに対するマクギリスの回答、及び監督インタビューから窺えるのは
オリジナルの阿頼耶識手術は大人にも施すことができるという事実のみであり、
オリジナル阿頼耶識が三日月らの阿頼耶識よりも高性能かということには触れていません。

またマクギリスの脳に負荷がかかる描写が殆ど(起動時に少しある)無いことから、
バエルからのフィードバックは他の阿頼耶識に比べて極めて少なく、おそらくは
戦闘の殆どをバエル搭載の人工脳が独立して行っていると考えられます。
現に元々のマクギリスの戦術は正確な敵戦力の分析と、闘牛士のように攻撃をいなす戦い方です。
しかしバエル搭乗後は剣を交差してドリルランスを正面から受け止めたり、剣で打ち合ったりして
マクギリスらしい戦い方をしていません。

あの戦いのバエルの動きはバエルの人工脳が主体であり、マクギリスには指示程度の役割しかなく、
奇しくもマクギリスとバエルはガエリオらの疑似阿頼耶識のような関係にあったことになります。

そして3についてです。
バエルに乗ったマクギリスに見られる他のガンダムパイロットとの違いは、性格の変化にあります。
いわゆる頭マクギリスで草バエルwwwと言われる、急にマクギリスの頭が悪くなったように見える
劇中終盤に露見した彼の無計画性などを指すものです。

作品終盤において行われた無理なシナリオ変更が原因であるとも言われていますが、
バエルに宿るアグニカの魂による影響を受けたという説もあります。
これだけでは単なるオカルトですが、人工脳を前提としたならどうでしょうか

前回の考察で暴走時のアインは人工脳の影響を強く受けていた可能性に触れました。
そしてバエルにはアグニカの脳と同期していたであろう人工脳がそのまま残されています。
マクギリスはこの人工脳の影響を受けて性格に変化をもたらした可能性があります。

以上3つをまとめると、
1 マクギリスの身体感覚は人工脳からのフィードバックを受けていないが、痛覚は操縦に影響する。
2 バエルの操縦は殆ど人工脳が行っている(マクギリスは戦術的な指示のみ?)  
3 マクギリスの性格部分には人工脳からのフィードバックを受けている。

となります。つまりパイロットと人工脳は殆ど同調しておらず、同調しているのは
性格に影響する八識部分のみということになります。
しかし人工脳は八識を再現できなかったはずです。
八識情報が人工脳側から送信されなければ、パイロットの性格を変化させられません。

ということは、バエルの人工脳には八識機能が備わっていることになり、これこそが
バエル以外のガンダム・Fから抜き取られた「重要なもの」の正体ではないでしょうか。

次回はバエルの阿頼耶識・後編について語ります。



厄祭戦考察24「阿頼耶識システム(バエルの阿頼耶識・後編)」
2019/4/24(水) 午後 4:04

前回はバエルの人工脳に八識機能が備わっている可能性について触れました。
今回はその続きです。

そもそも人工脳がパイロットとの同調を必要とするのは人工脳に八識が再現できないからであり、
もし再現できるのであればそれに越したことはありません。

ではどのようにしたら八識を再現できるでしょうか。
人工脳とパイロット脳とを同調させ長期間に渡り運用を続けた場合、
八識有りのパイロット側と八識無しの人工脳のデータ上の「差」が検出されるはずです。
これこそ八識有り無しの差であり、この差を分析、蓄積していくことで、
究極的には八識のデータが揃い、八識を再現できるはずなのです。

つまりバエルにはアグニカ・カイエルが搭乗したことにより蓄積された膨大なデータから
アグニカ・カイエルの八識を再現した言わば真阿頼耶識システムが備わっているのでは
ないでしょうか。
その場合バエルは人工脳単体で動けるのでマクギリスの脳や体と深い同調は不要です。
せいぜいアグニカ八識と戦闘目標・戦闘目的など意識共有をするくらいでしょうか。

そう考えると前回述べた3点について説明がつく他、厄祭戦後に起こったことも想像できます。
厄祭戦終戦直後、北欧一派は阿頼耶識手術をしてバエルを起動させようとしましたが、
アグニカ・カイエルの八識に阻まれ起動させることができませんでした。

そこでバエル以外のガンダム・Fのコックピットブロックを各地から回収して、
同ブロックに存在する八識を含むパイロットの脳データを記録したレコーダーから、
バエル起動の研究をしていた。あるいはカイエル一派残党がそれを阻止するために、
あらかじめコックピットブロックを抜き取った状態でガンダムを放棄しました。

結局バエルは起動することができず、北欧一派は自分達以外の者がバエル動かして、
現在の自分達の権力が剥奪されることがないよう、阿頼耶識手術そのものを禁忌とし、
バエルを事実上封印してしまったと考えられるのです。

また、放送終了後、アグニカなりきりセットと揶揄されたバエルでしたが、実は本当に
アグニカなりきりセットとして厄祭戦後を見据えて造られたのかもしれません。

G.H当初の理念は世界における秩序の番人だったはずです。
このような警察機構がその業務を効率的に遂行するには、強い権力を与える必要があります。
がしかしG.Hがそうであったように、権力や特権は組織腐敗の温床となりやすく、
これを解消するには、不老不死の優秀な正義の指導者にその権力を持たせ、
未来永劫世界平和を守ってもらう以外にありません。

当然そんなことは不可能ですから、現在の世界においては警察権力に対し権力の制限をしたり、
監視監査をする機構をもたせるなどをして対応しています。

ところがこのアグニカなりきりセット方式であれば、この理想が実現できます。
(もちろんアグニカ・カイエルが優秀な正義の指導者であることが前提です)
バエルを操る者が警察権力全権を握るというルールと、バエルに宿るアグニカの八識に
認められたものが、世界秩序を維持し、これを脈々と受け継ぐ。
こうしていればG.Hは腐敗せず、正しい秩序の番人足りえたのかもしれません。

最後にこの人工脳による八識の再現が、ガンダム・F特有の真の阿頼耶識システムであるなら、
当然、最終話後のバルバトスには三日月の八識が記録されていることになります。
もし続編があるのなら暁が阿頼耶識を通じて三日月と対面するような展開や、
バエルに残されたマクギリスの八識と再び手術してバエルに乗ったガエリオの共闘など、
妄想には事欠きませんね。

考察はこれで終わりです。鉄血のオルフェンズは賛否両論の作品ではありましたが、
いわゆるファーストガンダムが40年という、ここまでの広がりを見せた要因であろう、
日本人特有の負けた側に感情移入する判官贔屓精神と、オタクたちが妄想の限りを尽くしても
消費しきれない宇宙世紀という懐の広い物語の余白を踏襲した作品といえます。
スマホアプリによる新たな展開もあるようですし、今後ともより一層の妄想に励みたい所存です。